ここは、さまざまな種族が生存する世界。
主人公、ベルメルシア家の御令嬢アメジストの種族は人族(ひとぞく)。
生まれてすぐに母を亡くした彼女は、優しい父と長くベルメルシア家に従事する祖父のような存在の執事、優秀なお手伝いたちに囲まれ過ごす。が、しかし……日々は『穏やかだ』とは決して言い難いものであった。
――その原因は、継母スピナの存在。
躾と称した暴言などの数々……それは彼女に対してだけではなく屋敷で働くすべての者たちにも及び、次第に皆の心は荒んでいく。
だが、鷹揚な性格である優しい父オニキスの背中を見て育った彼女は、スピナからの厳しい躾という名の威圧を受けながらも、とても素直で優しい女の子へと成長する。
近寄る者は排除すると言わんばかりに皆を邪険に扱う継母スピナの心に刺さる棘――何かがあると感じていたアメジストは、いつかスピナとも解り合える日が来るはずだと切に願い努力し、耐えながら日々を過ごす。
『自分の信念だけは曲げない、正しいと思う道を歩む』と強い意志を持つアメジスト。辛いことばかりだったはずの彼女の性格は温厚で慈悲深く、困っている者がいれば誰であろうと助けたいと常に考え、種族関係なく皆仲良しでいられる世界になればいいなと思っていた。
十六歳のアメジストは学校が終わった帰り道。ある大雨の夜のこと、途中でふと馬車の窓から見えた怪我人(幼い子)を助ける。その時、一緒に乗っていたアメジストの教育兼お護り役であるジャニスティと御者エデの協力で瀕死状態であったその子は屋敷へと連れ帰り、ジャニスティの取った方法で奇跡的に助かる。
それがきっかけで――この日から彼女の人生は信じられない程に大きく変化し、ほんの数日間が数年にも思えるくらい心身ともに成長していく濃い出来事を、経験するのであった。
(R15はほけんです)
◆第2回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品
※こちらの作品はカクヨム様、アルファポリス様でも掲載中。