獣人族の少女、阮金花(グエン・キム・ホア)は、全てを喪った。故郷、家族、それから記憶すらも。
彼女に遺ったのは、異形の太刀と「魔王を殺せ」という、呪詛じみた言葉のみ。彼女は喪った何かを探し求め、ただ一つの手がかり、「魔王を殺す」ための旅を始めた。
成長した彼女は、小国ジェノヴィアに現れた“繚乱の魔王”ラザール・ド・ミュラの討伐軍に志願する。
自信家の魔法使いアッテンボロー、討伐軍を率いる(美)少女貴族ラウラ、謎多きオークのアドラー、傲慢な性格の独裁者ネグロポンテと古き都市国家ジェノヴィアの人々。
彼らとの出会いは、「魔王を殺す」ことしか知らない彼女に変化をもたらしていき――
魔法から科学へ。
すでに英雄の時代は過ぎ去った。
かつて絶対的な武力の象徴であった魔法も、今や科学に追い越されようとしている。
魔王とは何か、それを知ったとき、彼女は本当に魔王を殺すことができるのか。
これは魔王という、巨大な時代の終焉を描く旅物語。
花の旅は今ここに幕を開けたばかり━━
旧『やがて終焉のサタノマキア』2022/11/30改題