秘匿すべき化け物──それが、密かに付けられた彼女の呼び名であった。
アリアは伯爵令嬢として生まれながら、まともに属性魔法が使えないために、虐げられて育った。幼い頃に患った大病のせいで、ハーフエルフの疑いを持たれるようになり、迫害される存在となってしまったのだ。
亜人種差別が著しいこの国では、政略結婚の道具にさえならないと見限られ、辺境で暮らす祖父のところで介護でもしていろ、二度と戻ってくるなと家を追い出された。
自身に貴族令嬢としての価値がないことを理解していたアリアは、将来は冒険者として生きる決意を固めていたため、継母と義妹が牛耳る家で一生過ごすよりはマシ、と躊躇うことなく旅に出た。
できるなら、祖父の力を借りて継母と義妹を断罪したかった。
あの二人は、アリアの実の母を殺した。次はアリアと、兄のアルトを殺して家督を乗っ取るつもりなのだ。
しかし、旅の途中で刺客に襲われ、たった一人の従者は瀕死。
途方に暮れていたところを、剣士と魔法使いの二人組の冒険者に助けられ、一緒に旅することとなった。
けれど辺境の地にたどり着くためには、恐ろしい魔物が跋扈する荒野を抜けなければならない。四人は新しい仲間を探すために、有名な大魔法都市へと向かうのだった。
はたしてアリアは、継母の企みを阻止して平穏を手に入れることができるのか──?
魔法使いとしてのアリアの成長と、従者である獣人少年の密かな想い。新たな仲間との交流や、祖父との邂逅。辺境の地でアリアの人生は大きく変わることとなる(はず)。
──実家? いつの間にか焼失して、一家離散してましたが何か??