あの日、俺はすべてを失い、そして死んだ。はずだった……。 一年前、蓮の見えていた世界すべてを奪った真呼村焼失事件。 唯一の生存者である彼は記憶を失っていた。 彼の身元を証明するものが何一つなかったために施設に送られることになったが、すぐに養子にしたいという神足町に住んでいた那須野夫婦に引き取られる。 生活にも慣れ、ようやく平穏な生活を取り戻しつつあったが、ある日彼の前に一人の少女が現れ、やがて世界をも飲み込む争いに巻き込まれる。 そこで那須野蓮は知る。自分の過去と彼女の秘密を……。

　少女は、平凡な日常を送っていた。彼女が思うに、たかがネコに家の鍵を持っていかれたくらいでおかしくなるはずはなかったのだ。いくら『魔法』なんてものが、現実になっている世の中だとしても。当然、何故か異世界に行ったりする訳も無く、何故か意味不明な事件に巻き込まれるはずも無かったのだ。……本当は。少女の、成長するかもしれない物語が始まります。