『この小さな、目的を果たさなければ意味のない肉体が痛むからといって、叫ぶからといって、なんなのか。――夜の闇が味方だった。常に。人の顔色を窺わなくていいから』
天上には殺意を持つ者はいない。
天使たちは、それ故に平和に暮らしていた。
十七歳のリリーもまたそのうちの一人だった。マクナイル城の近衛兵として働きながら、小さな事件を解決しながら、大好きな姫君の横で働くことを夢見ていた。
そんなある日、城下で無残な殺害事件が起こった。
天上には殺意を持つ者はいない。それ故に平和に暮らしているはずだった。
七年前に起きたものと類似した殺害事件。
リリー・エウルは近衛兵として、一度は解決したはずの事件の終息を目指すことになる。
――が、そこには少女にとって残酷な運命だけが待ち構えていた。
※連載中の「天上の黒百合」は、このLily in Blackのリメイク版になります。大筋のストーリーは一緒ですが、工夫を新たにしているものでもあるため、新連載の方を読んで頂けるのであれば、そちらを読むことを推奨いたします。