戦場が日常だったとある異能の兄妹が、ある日異世界へ飛ばされました。
その二人は戦う者でした。戦いに臨む力と心があって、それを振るう理由がありました。
人の理を逸脱(いつだつ)した肉体を頼りに、手には無骨な現代兵器を携えて。
同じ境遇の仲間らと共に、終わりの見えない戦いに臨む者達でした。
そんな彼らが行き着いたのは科学の代わりに魔法が発達した世界。
危険な魔獣や魔物が跋扈する、街の外への一歩が死地への一歩になる世界。
辛うじて手元にあったのは携帯可能な武器とわずかばかりの糧食です。
悪くない。これなら危険から身を守ることくらいはできる――でも、それだけでいったいどうすればいいのでしょう。
言葉は通じず身分も持たず、お金もなければ便利な魔法も使えない。
頼る伝手(つて)も寄(よ)る辺(べ)もない世界で、二人助け合って何とか生きて行くのが精いっぱいなのでしょうか。
けれど、そんなことにはなりませんでした。
言葉を知らない? ――ならば現地で修得すればいいじゃないか。
魔法が使えない? ――よし。それなら武術でねじ伏せちまえよ。
へ? 怪獣が攻めてきた? ふむふむ。それなら、いったいどうしてやろう――
二人ならば大丈夫。今までもこれからも。どこにいてもどんな目に遭っても。例えどんな別れがあったとしても。
これはそんな物語です。
※主人公達が冒険者になるのは2章から。物語が明確に動き出すのもそれ以降となります。
また、章末の「まとめ」は本編を追う際には読み飛ばしてしまって問題ない仕様です。章内で出てきた情報の再掲となっておりますので、再読時の助けにでもして下さればと思います。