ゲームマスターとは、ゲームの中に入ってトラブルの解決をする運営スタッフの事。
20XX年に発売された典型的なファンタジー世界を舞台にしたMMORPG。
使い古された設定と揶揄する声もありましたが、蓋を開けてみれば、その自由度の高さが支持されて大ヒット。
10年以上世界トップ・シェアを誇る傑作と評価されています。
やっぱり何だかんだ言って、みんなベタが好きなんですよ。
私は、その開発チームの一員にしてゲームマスターの……通称「なかのひと」なのです。
毎日ゲームの中を歩き回って、バグを見つけて、デバッグチームに対応を指示したり、ユーザーの通報で駆けつけトラブル・シューティングを行うのが私のお仕事。
こういうアフター・サービスやランニング・デバッグの充実も、このゲームが評価されているポイントなんですよね。
ゲームマスターは私の他にも大勢いますが、私はゲームマスターの中で唯一の制作スタッフであり、ゲーム内での大きな権限を持っていました。
時々デモンストレーション・プレイヤーとして見本実演をしてゲームの内容を広報したりもします。
それからチュートリアルで動いているキャラクター……アレも私がプレイした様子を記録したものなんですよ。
さてと、今日もゲームの世界を徘徊しましょうかね……。
どうして、こうなった?
どうやら、私……ゲームの世界に飛ばされたらしいのです。
第10回ネット小説大賞・一次選考通過。