異世界で危機に陥ったある国で伝わる物語があった。
この世界の住人達の命を餌とし、蹂躙する存在がいる。
総じて「魔族」と呼ばれたそれらは、何処からともなく現れる。
何の運命のいたずらか、それとも魔族の気まぐれか。
魔族の餌になるはずだったエルフが襲われ、魔族の子を身ごもった。
魔族の血を引いた忌み子は「混族」と呼ばれ、侮蔑され、虐げられ、恨まれる存在だった。
そんな「混族」として生を受けたギュールス=ボールドに、彼を取り巻く世界から虐げられる日々を送る運命が待ち受ける。
それでも彼は思う。
世界中から恨まれようとも、自分は「魔族」なんかじゃない。
だからこの世界のために生きよう、と。
この世界の危機を救う英雄の誕生の伝説は、華やかなものとは縁遠い舞台。
世界に平安を広めた一族は、そんな過酷な運命を背負う彼から始まった。