「魔法は勇気と知恵。」
アベル・ベルナルドは魔法の勉強が得意なことだけが取り柄の男の子だった。
イメリス王国――人間種と森人種(エルフ)が共に建国した世界最古の王国であり、剣と魔法の御伽噺が人々の中に連綿と生き続ける『杖の国』。
アベルはイメリス王国第四魔法魔術学校の特待生に選ばれるほどに優秀な成績を残していたが、卒業まであと少しの所で学費免除の打ち切りを告げられ退学の危機に迫られてしまう。
退学を回避する方法は一つ。魔術大会に出場し『魔法使い』としての価値を証明することだった。
魔法によって作られ魔力に満ちたこの世界にとって『魔法使い』とは選択可能な職業の一つでしかなく、アベルは魔法が好きなだけの平凡な少年だった。
これは「勇者が魔王を倒す」――そんなひねりのないありふれた英雄譚であり、
ただの魔法使いがこの物語の登場人物になるまでの旅路である。