【あらすじ】
勇者と聖女によりこの地に安寧が齎されてから、どれだけの時間が流れたのだろうか。
とある王国では、いずれまた来るであろう混迷の時代に対処するため才能ある子女を集め、その中から勇者と聖女を見出し人類の旗頭として、また民衆の象徴として治世していた。
100代目勇者と聖女を決める候補選──聖選儀。
その熾烈な争いに敗れたディトとリーンは、誰よりも優れた資質と実力を兼ね備えながらも、勇者・聖女候補の資格を剥奪されてしまう。
彼らはその存在だけで現王家、次世代勇者・聖女への大きすぎる懸念となってしまうため、それを悔やんだ大巫女は二人を候補選の最中の事故死に見せかけて、国外への逃亡を幇助する。
元勇者候補ディトは戦うことしか知らない。
元聖女候補リーンは神殿の外の生活を知らない。
様々な政敵の目を欺くにはたった二人で国を出奔せざるを得ず、大巫女の計らいで仮初の夫婦となった二人は、隣国の辺境にて人に隠れて生活を始める。
お互いを知らず、また生きていく術を知らない二人は最初こそ言い合いの絶えない不安な日常を送っていたが、やがてディトの信念と、リーンの優しさに気づき、この生活が徐々に大切な物になっていく。