はるか太古に生まれた荘厳なるタマラの森。
神々が住まう神殿のごとく、巨木は林立し、その間を浮遊魚の群れがいくつもすり抜ける。
精霊が行き交い、力ある獣たちを獣王が統べるタマラの森。
その中に虹の輝きを放つパロミラル湖がある。
中程に浮かぶ聖ロラ島に聳える巨大な巻き貝の城。淡緑色の巻貝城を囲む塔群。今やそれらは全て消え失せ、伝説上のこととなりつつあった。
遥か千年の昔、突然巻き起こった降星大戦。一つの島ほどもある岩塊が天空より降りて来た。パロミラル伯王領に襲い掛かる蛇竜騎士、植物兵。黒竜に打ち跨り、カルガの弓と竜槍で、果敢に挑んだ小さな民、アードラ族の黒竜騎士を先頭に、水棲種族のクウィーカ族、地精族が立ち向かった。
アードラ族がパロミラル湖の守護者であったのもかつてのこと、前の大戦で黒竜を失い、一族の誇りを喪失して以来、古の文化を伝えながら樹海に没しようとする山城でほそぼそと暮らす日々。
森の少年ピウィが出会してしまった、森の上空を駆け抜ける浮遊樹、そしてそこから始まる異変に、地精族の仲間とともに深く関わることとなる。久方ぶりに称号を受け継ぐ精霊院の青巫女パミラとの出会い。パロミラル湖をとりかこむ樹海地方をピウィが駆け抜け、弓がうなる。最後の黒竜が咆哮を上げ、ピウィは再び始まる大戦に挑む。