「綾崎先輩、私たち、お付き合いしませんか?」
俺に端正な顔をぐいっと近づけながら、彼女……藤代三葉は俺、綾崎悠人に告白してきた。
時間は放課後、場所は夕日が照らす学園の屋上。
世の男子ならみんながみんな憧れる、最高のシチュエーションだ。
……俺の胸元をつかみ上げ、脅すような恰好でなければ……。
これが、「偽装恋人関係」のお誘いでなければ!
「綾崎先輩、私たち、これでは恋人に見えないと思います」
「なるほど、じゃあどうすればいいんだ? 手でもつなぐか?」
「すいませんお断りします」
「お前、さては演技するつもりないね?」
これは、とある事情から偽物の恋人として始まった恋愛経験値0の2人の心が、徐々に近づいていく様子を描いた物語です。