「3年間、ずっとずっとお待ちしておりました……クラリッサ様に再びお仕えできるのを……」
リリー、と呼ばれた少女は今にも泣きそうになりながらそう告げた。
クラリッサはとある事件によって3年もの間眠り続け、ようやく目覚めたが、以前の記憶――俗に「思い出」と呼ばれる、自分のことや人との関わりに関する記憶――を失っていた。
眠っている間ずっと庇護下に置いてくれていた叔母のユリアナから説明を受け、従兄妹達のいるクロスフォード公爵家に身を寄せることになったクラリッサ。
「こんな人クラリッサじゃない」なんて言われたらどうしよう、と不安を抱くが、クロスフォード公爵家の人々と過ごす内に、その不安が杞憂だったことを知る。
そして、クロスフォード公爵夫妻と養子縁組をすることで、クラリッサはやっと安心できた――筈だった。
「あれがウルラの後継者……?」
貴族の子弟が通う学院への入学申請のため訪れた王都で待っていたのは、周囲の貴族達の探るような眼差しと、「ウルラの後継者」という謎の言葉。見ず知らずの大人たちの目線と囁きに、クラリッサは恐怖を抱く。
逃げる様にその場から離れたクラリッサを待っていたのは――?
これは、3年の眠りから目覚めた少女の成長と記憶、そして運命の物語。
ノベルアッププラスにも同時投稿しております。