戦国時代、父の戦死で困窮した若い武士・大江小十郎は、石見銀山の記録係として本城家に仕官する。しかし初日に目にしたのは、想像を絶する過酷な現実だった。
赤茶色に汚染された山、独特の臭気が立ち込める鉱山で、大勢の人々が命がけで銀を掘り続けている。そして起こる大規模な坑道崩落事故。
「真実を記すことしかできない」記録係という閑職で、小十郎は命を軽んじる現場と、不正に手を染める上役たちの姿を目の当たりにする。
そして、やがて知ってしまった主家の秘密に、彼は深い困惑を抱く。
果たして本城家は尼子家に忠実なのか、それとも——。
混乱の中で小十郎は、自分がどう振る舞うべきかという重大な選択を迫られることになる。
名もなく力もない一人の青年が、戦乱と陰謀渦巻く中で生き抜こうとする。
命が欲と野望に喰われていく戦国の世で始まる、記録係からの成長物語。