二年生に進級した橘 信吾(たちばな しんご)のクラスには、留年した生徒がいた。名前は愛澤 心優(あいざわ みゆ)。赤髪、ピアス。着崩した制服。誰が見たって、ヤンキーだった。
そんな心優には誰も近づかない。当然それは信吾も同様で、関わることなんてない……はずだった。
心優は信吾が所属する軽音楽部の幽霊部員であり、三年生が卒業して信吾一人だけと思っていた軽音楽部は、愛澤心優との二人だった。
苦手で、信吾のタイプではない彼女。
それでも、趣味や音楽の好みがあった二人は徐々に打ち解けていき──
「い、いや、別に……好きとかなるわけないし」
平凡で音楽好きの信吾と、なにやら訳ありの心優。
そのうち、一生隣にいる関係になるのは、だいぶ先の話。