この世を去る前に、ユリは手紙を書く。自分の十一年間の戦いの記録を、残すために。
「どうかこの世界を救ってください、異界より降臨なさった聖女様」
すべての始まりは、まだユリが中学二年生の時、突如浮かび上がった魔法陣に引きずり込まれたことから始まる。
異世界の美しい男性たちに囲まれ、世界を救ってほしいと頼まれたユリは、二つ返事で聖女となることを了承した。
七人の美しい恋人を手に入れ、豪奢なドレスや宝石を献上される、何不自由ない毎日。
もはや現代へ帰ることさえ忘れていた矢先、ユリは前代の聖女達がどうやって死んでいったのかを夢で見る。
そして知ってしまう。
ユリの教えられたすべては、虚構のシナリオだったことに。
偽りの聖女という存在、偽りの愛を囁く王子たち、偽りの役目。
『聖女』となることの本当の意味を知ったユリは、いつの日か家に帰ることだけを希望に、孤独と恐怖と戦った。
十一年間の時を経て、ついに日本へ帰ることに成功したユリ。
けれどそこにたち塞がるのは、ユリを異世界へ連れ戻そうとやってきた、欺瞞で塗り固められた異世界での恋人たちだった。
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