アルムグレーン侯爵夫人は馬車に揺られながら腕を拱いた。
可愛い孫からの手紙に「好きな子がいるけど卒業まで様子見かな」と書いてあって「我が孫ながら……」と溜息を吐いた日を思い出す。
あの子が手を出すのを躊躇うくらいだ。相手方に何かしら問題があって、その問題の解決が卒業後になるだろうと見込んでいるらしい。
何を悠長なことを。
祖母に“知られても構わない”相手ができたというのに“見てるだけ”のつもりだとは。暢気なところは祖父に似たに違いない。
孫の尻を叩けるのは自分だけだ。
意を決したアルムグレーン侯爵夫人は結婚後数十年ぶりに初めて祖国に戻る決断を下す――。
※孫メインの話。おばあちゃんはそんなに出て来ません。