アイザックはA級の冒険者である。元は貴族家の生まれだが、優秀な兄たちと比較され「要らないもの」とされた。成人と共に家を出て、死をも恐れぬ無謀な戦い方で武功を立てる。
一生を遊んで暮らせる報酬を得て、三十代も半ばを過ぎた今では指名を受けた時にだけ出張る気ままな一人暮らしだ。
そんな日々の中、とある依頼で出掛けた森の奥。出会ったのは、蜘蛛の巣の罠に掛かって磔にされている美しい少女、サンビタリア。
どうやら彼女も訳ありの様で、たまに見せる不安気な表情はアイザックの庇護欲を大いに掻き立てる。
どこか欠けた者同士が偶然に出会い、共に過ごす時間で足りなかった何かを埋めていく。
己の居場所を求めてもがき続けるふたりが過去の確執を乗り越えて、大切なものを見つけるまでの物語。