2015年01月08日 (木) 01:30
そろそろep10の連載準備です。数週のうちに始まる予定ですよ。
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◆01
こんにちは。
何と書き始めるのか迷ったのだが、最初の言葉は挨拶がふさわしい。
Hello, world. Hello, shiroe.
私は今、ヤマト中央部、サフィールの町の宿屋にてこの手紙を書いている。
この手紙は書き終えた後、知己ミノリへと託すつもりだ。
読むのはログ・ホライズンのシロエと聞いている。その名前を聞いて私は不思議な気分になったものだ。わたしの中にはあなたの記憶が残っているからだ。
あなたたち〈冒険者〉が異なる世界からこのセルデシア世界へと受肉した存在であるように、私たちもまた異なる世界からこのセルデシア世界へと受肉した存在である。
私の名前はロエ2。
私たちは私たちを〈航界種〉《ルビ:トラベラー》と呼ぶ。きみたちから見れば異世界の知性体だ。
同時に私自身はあなたの妹でもある。
おそらくあなたは期待しているだろうし、それに関しては申し訳ないと謝罪をすることしかできないが、私たち〈監察者〉《ルビ:フール》も私たちと同じく〈航界種〉に属する〈採取者〉《ルビ:ジーニアス》も、〈合致〉《ルビ:エクリプス》――あなたたち風にいうと〈大災害〉についてあなたたちに何かを説明することは出来ない。正確にいうならば、説明することは出来るが、それは私たちなりの〈合致〉に対する理解であり、原理の解明でもないし解決策でもない。
それでも私たちはあなたたちよりもわずかではあるが先へ行っていると信じその義務を履行しようと思う。わたしはあなたの妹でもあるけれど、ミノリと約束したように、姉でもあるからだ。
その点、私がなぜロエ2であるのか。
なぜ妹であるのか。
そのあたりから説明をすべきだろう。
私たち〈航界種〉はあなたたちと同じく、あの〈合致〉によりセルデシアにたどり着いた。しかし、私たちの世界はセルデシアよりはるかに遠く、また私たちはそもそも物理的な形状や形状データをもたない種族だった。
この世界にたどり着いた私たちは、それゆえ、この世界に既に存在した肉体を化身として借り受けるという形になった。
ミノリの言葉が正しいのならば、あなたは非常に察しが良い知的な人物だという。
ここまで説明すればお分かりだと思うが、私の現在の肉体は、月にて保管されていたあなたのものであり、この世界風にいうならば「魂との接続」がない状態であったものだ。
無断で借りた形になるが許してほしい。
この肉体にはあなたの思考や記憶が色濃く残っている。
私がこうしてあなたに説明できているのは、あなたの語彙データを再構築してのことだ。この世界の言葉をしゃべることができるのもあなたのおかげが大きい。その恩義に報いるのも、この手紙を書く動機の一つだ。
願わくば寛容の精神でこの手紙を読んでほしい。
破り捨てるのはいつでもできるのだから。