天罰により雪に閉ざされた王国を救うため、母を亡くした薄幸のお姫さまは森の狼のもとに嫁ぐことになりました。生贄として差し出された、望まれない名ばかりの花嫁です。
しかし年老いた狼は、ひとりぼっちのお姫さまを優しく受け入れます。家族の愛を知らないお姫さまと、人間に仲間を奪われた孤独な狼。凍えるような寒さの中、彼らはひと冬をともに過ごし、やがて本当の夫婦になったのでした。
ところがあるとき、彼らの幼い子どもたちに命の危機が訪れます。子どもたちを救うために王国から届けられたはずの薬は、実は猛毒だったのです。我が子を守るため、お姫さまと狼はそれぞれの大切なものを差し出すことに決めます。けれど、お姫さまと狼はその何よりも大切な瞬間にすれ違ってしまい……。
甘え方を知らない臆病なお姫さまと、お姫さまを唯一の番として心から愛した白銀の狼のお話。
※佐倉治加様主催による「真冬に染みるくれなゐ」企画に参加しております。タイトルにあります「暁の国」は、この企画タイトルから連想いたしました。
※アルファポリスにも投稿しております。