完結。
直径4,000キロにも及ぶ巨大な円形山脈の内部に、突如として日本が国土ごと転移した——それは、超常現象による不可解な出来事だった。
海に囲まれた島国から、完全に海と切り離された孤島へ。アメリカも、他国も存在しない、完全な孤立状態。
転移先の惑星は、地球よりはるかに巨大で、人工衛星が軌道を巡り、テレビ放送が届き、現代的な国家体制や軍事組織、国連に相当する枠組みさえ機能している文明社会だった。
その中で、日本が転移した場所は「イルリハラン」と呼ばれる国家の領土。意図せぬ形で他国の主権を侵した日本は、否応なく侵略者として現地に登場してしまったのだ。
さらに、この星の人類は重力に逆らい、生身で空を飛び、空中移動を前提とした文明を築いていた。
イルリハランは、空飛ぶ兵力を山脈内へと派遣。対する日本は、地上を走る車両によって未知の大地を調査する。
互いに「宇宙から来た異星人」と信じたまま、ついに邂逅の瞬間が訪れる。
そのとき銃を向けるのか、それとも言葉を交わすのか——。
文明水準が拮抗する状況で、日本とイルリハランは、どのような第一歩を踏み出すのか。
ひとつだけ確かなのは、日本が軍事的に戦っても勝てる見込みはないということ。
勝つには、戦わないこと。外交という未踏の戦場で、日本は国家の存亡を賭けて交渉に挑む。
全てが手探りのまま、異星との命運を握る外交が、今始まる。