国は歓喜に湧き、新たな時代への期待を膨らませていた。人類の敵である魔王を倒せる勇者が現れたのである。はるか昔から予言されてきた、銀の髪に青い瞳を持つ少年が生まれ、彼には膨大な魔力と、強大な身体能力が備わっていた。
この世の悪たる魔物、それを統括する魔王を打ち破る。英雄譚に少年は胸を踊らせた。飢餓に苦しむ人々が、家を失い風に震える民が、魔王を倒せば幸せになれると信じて、彼は震える足に鞭を打ち、魔王城に乗り込んだ。
彼は信じていたのだ。
魔王を倒せば、きっとみなが幸せになれると。きっとそうなのだと、まだ幼い少年は信じていたのだ。
☆一人称寄り三人称視点
☆およそ一万字